企業の生成AI活用率は34.5%か86.4%か ── 2つの調査の設計を対照する
帝国データバンクの調査では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%。令和8年版情報通信白書では、自社の何らかの業務で生成AIを利用している企業は86.4%です。使えるかどうかは、自社がその調査の対象に入るかで決まります。2つは対象にした企業も、答えた人も同じではありません。
- 最終確認
- 2026-08-13
- 対象
- 帝国データバンクの調査/令和8年版情報通信白書(概要)
- 確認範囲
- 各調査が公表している設計と数値。どちらが実態に近いかは判定していない
- 更新周期
- 更新なし(次回版が出たらこの記事を更新する)
目の前の活用率を、自社の判断材料に使ってよいか
その数字がどちらの調査のもので、自社がその対象条件に入るかを確かめてからになります。34.5%と86.4%は、対象にした企業も答えた人も同じではありません。
2つの数値は、対象・回答者・設問・時期が異なる。値の差を計算していない。
2つの調査は何が違うのか
両方に記載があり違いを確認できたのは4項目です。残る4項目は、帝国データバンク側の記載を確認できていません。
| 項目 | 情報通信白書(令和8年版) | 帝国データバンク |
|---|---|---|
| 標本の作り方 | 調査会社の登録モニターから抽出 | 全国2万3,349社に実施、回答率44.2% |
| 有効回答数 | 日本515件(当該設問はn=477) | 1万312社 |
| 設問の言い方 | 自社の何らかの業務で生成AIを利用している | 生成AIを業務で活用している |
| 調査時期 | 2026年1月〜2月 | 2026年3月17日〜3月31日 |
| 母集団の条件 | 2025年までにデジタル化の取組を開始した企業に勤める者 | 記載を確認できず |
| 従業員規模の下限 | 従業員10名以上 | 記載を確認できず |
| 回答者 | 企業全体の戦略等を理解する管理職以上の役職 | 記載を確認できず |
| 回答の規模別内訳 | 515件のうち大企業353件・中小162件 | 記載を確認できず(社数の内訳) |
「記載を確認できず」は、条件が無いという意味ではありません。取得したページに書かれていなかった、ということだけを表します。
設問の言い方については、各調査が本文で使っている表現を並べたものです。実際の設問文と選択肢の文言は、どちらも取得していません。
白書の86.4%は誰に聞いた数字か
あらかじめ条件を満たす人だけに聞いています。デジタル化に着手済みの企業の、管理職以上の役職です。
同じ調査で、生成AIの活用方針を「積極的に活用する方針」「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた割合の合計は68.9%(n=515)でした。2024年度調査の49.7%から上がっています。
出典:令和8年版情報通信白書(概要)。表紙の記載は「2026年7月 総務省」で、日付までは確認できませんでした。概要PDF
帝国データバンクの34.5%は誰に聞いた数字か
全国2万3,349社に実施し、1万312社から回答を得ています。規模別と従業員数別の数字も公表されています。
| 区分 | 活用している |
|---|---|
| 全体 | 34.5% |
| 大企業 | 46.5% |
| 中小企業 | 32.4% |
| 小規模企業 | 28.0% |
| 従業員1,000人超 | 63.6% |
| 従業員301〜1,000人 | 51.9% |
| 従業員5人以下 | 29.6% |
業界別では、サービス47.8%、金融38.6%、不動産34.9%、運輸・倉庫27.5%、建設26.4%です。主な活用業務は「文章の作成・要約・校正」が45.1%でした。
活用している企業に業務への効果を聞いた設問では、「大いに効果が出ている」25.2%と「やや効果が出ている」61.5%を合わせた86.7%が効果ありと答えています。この86.7%は活用企業のみを分母にした数字で、白書の86.4%とは別のものです。数字が近いため、取り違えに注意が要ります。
出典:帝国データバンク。2026年3月17日〜3月31日の調査で、TDB景気動向調査2026年3月調査とともに実施されたと記載されています。調査結果
自社はどちらの対象に入るか
従業員数なら判定できます。規模区分(大企業・中小・小規模)と「デジタル化の取組」は、どちらの調査も定義を公表していないため判定できません。
白書には、生成AIの利用率を企業規模別に分けた数値がありません。データ集の項目一覧では、活用方針の策定状況や組織的な取組状況には「企業規模別(日本)」の項目がある一方で、「生成AIを一つ以上の業務で利用している割合」は「国別」だけです。規模で比べられるのは、確認した範囲では帝国データバンク側の数字になります。
この記事で確認していないことは何か
どちらの調査が実態に近いかは判定していません。
- 2つの数値を足す、引く、平均するといった加工はしていません
- 各調査の設問文そのもの(選択肢の文言)は取得していません
- 帝国データバンクの調査方法(郵送・インターネット等)と回答者の役職は、取得したページでは確認できませんでした
- 帝国データバンクの規模区分の定義と、有効回答1万312社の規模別の内訳(社数)は確認できませんでした
- 白書の n=477 と有効回答515件の差である38件の扱いは、取得した範囲では確認できませんでした
- 白書の公表日は、表紙の「2026年7月」までしか確認していません
どちらかの調査に次回版が出た時点で、新しい記事を作らずこの記事を更新します。